「自分のプレゼンテーションに自信がない・・・」
「上手にプレゼンするコツを知りたい・・・」
あなたは自分のプレゼンテーションに自信がありますか?
会議や商談、製品発表会やセミナーイベントなど、ビジネスではプレゼンテーション(以下:プレゼン)が求められる場面が多くあります。
プレゼンはビジネスの場面だけで必要となるわけではありません。
転職活動等における「自己アピール」もプレゼンといえますし、「好きな人への告白」もある種のプレゼンといえます。
そう考えてみると、私たちの人生はプレゼンの連続なんですね。
だからこそ、プレゼンスキルを早い段階で磨いておくべきなのです。
そこで今回は、過去500回以上のプレゼン経験を重ねてきた、私ウェブライダー代表の松尾が、プレゼンスキルを最速で引き上げるコツをお教えします。
私は元々プレゼンが苦手で、初めて登壇したセミナーのアンケートではさんざんな結果でした。(その当時の聴講者の皆さま、本当に申し訳ございませんでした・・・)
しかし、その経験をバネに、諸先輩方のプレゼンを徹底的に研究し、やがて自分なりのプレゼンメソッドを編み出すことができました。
ちなみに、今回の記事はまさにプレゼンスタイルで進行していきます。
記事の文体がプレゼンのトークのようになっていますので、読んでいただくだけで、プレゼンの感覚がつかめるはずです。
また、今回使用しているスライドは190枚あり、Speaker Deckのページにもアップしています。
それでは、魅惑のプレゼンメソッドの世界へと参りましょう!
まずは、プレゼンテーションが上手くなるメリットについて整理しておきましょう。
メリットは大きく分けて3つあります。
「説得力が手に入る」「仕事の成果が上がる」、そして「コミュニケーション力が高まる」です。
最後の「コミュニケーション力が高まる」についてはピンと来ないかもしれませんが、伝えたいことが伝わりやすくなると、他者とのコミュニケーションが円滑になります。
伝わらないことから生まれる人間関係のトラブルを防げるようになるからです。
そして、メリットは上記以外にもたくさんあります。
■プレゼンスキルを身に付けることで得られるメリット
- 読まれる文章を書けるようになった
- 訴求力の高いランディングページが作れた
- ECサイトのコンバージョン率が上がった
- YouTubeで配信できるようになった
- YouTube動画の視聴者数が増えた
- セミナーやイベントの登壇回数が増えた
- セミナー参加者の満足度が高まった
- クラウドファンディングでの資金調達が成功した
- 営業成績がアップした
- 顧客やクライアントからの評価が上がった
- 競合よりも選ばれる存在になった
- リーダーシップが評価されるようになった
そもそもプレゼンテーションとは、相手に情報を伝え、行動を促すことを目的としておこないます。
ビジネスの世界は人に動いてもらうことが大切ですから、プレゼンスキルの優劣は、ビジネスに大きな影響をもたらすのです。
ここであらためて私の自己紹介をさせてください。
私は、マーケティングの支援会社「株式会社ウェブライダー」の代表を務めている、松尾 茂起(マツオシゲオキ)と申します。
茂起という漢字は「シゲキ」ではなく「シゲオキ」。
どれだけ茂った草むらに倒れ込んでも、何度でも起き上がる男「茂起(シゲオキ)」と覚えていただけるとうれしいです。
私は経営者の傍ら、「情報の伝え方の研究」をライフワークとしており、コンテンツディレクターとしてさまざまなWebコンテンツを制作したり、『沈黙のWebマーケティング』『沈黙のWebライティング』といった書籍を書かせていただいたりしています。
そんな私は過去、セミナー講師としてさまざまな場所で登壇してきました。
登壇回数は、大小さまざまなイベントを含めると500を超え、ありがたいことに「CSS Nite」というWeb制作系のセミナーイベントでは4年連続ベストスピーカーに選ばれ、殿堂入りしました。
最近では5,000名のライブ視聴数を超えたオンラインセミナー(例:みんなの資料作成Fes)やウェブ解析士会議2024、CMCJ2019、アドテックといったリアルセミナーにも登壇させていただき、宣伝会議「編集・ライター養成講座」では8年以上にわたり、講師を担当させていただいています。
実績だけ見れば登壇回数が多い私ですが、元々プレゼンが大の苦手でした。
というのも、私は30歳になるまでビジネスプレゼンの経験がなく、スライドすらつくったことがありませんでした。
そのため、初めて登壇したセミナーでは大緊張!
セミナー後のアンケートでは「内容が難しかったです」「早口に感じました」「一度も前を見て話してくれなかった」など厳しい評価をいただき、「自分はプレゼンが向いていないかも・・・」とガックリしながら帰路についたのを昨日のことのように思い出します。
しかし、そんな私でも、諸先輩方のプレゼンを徹底的に観察・研究し、地道なトレーニングを重ねた結果、自信をもってプレゼンができるようになったのです。
これから解説するプレゼンメソッドは、まさに、プレゼンの素人同然だった私が、プレゼン強者になるために汗と涙を流しながらつかんだ極意です。
さて、自己紹介はこれくらいにして、これからいよいよプレゼンの極意を紐解いていきます。
1.プレゼンを成功させるための大原則
どんな成功メソッドも、まず知るべきことは「何をすれば失敗するのか?」です。
失敗する状況を知っていれば、その状況を避けることで成功に近づけます。
そこでまずは「聴き手の3大ハードル」を知っておきましょう。
聴き手は「聴かない」「信じない」「動かない」。
私たちがプレゼンをする際には、この3つのハードルが立ちはだかります。
聴き手はこちらの話をしっかり聴いてくれないし、内容を信じてくれないし、せっかく良い提案をしても素直に行動してくれない・・・。
これら3つのハードルを乗り越えないかぎり、プレゼンは成功しないのです。
ではどうすれば、これら3つのハードルを乗り越えられるのでしょうか?
その答えは、ハードルをすべてひっくり返すことです。
そう、「聴かない」を「聴きたい」に、「信じない」を「信じたい」に、「動かない」を「動きたい」に。
そしてそのためには「なぜ、この話を聴くべきなのか?」「なぜ、この話を信用すべきなのか?」「なぜ、この話のとおり行動すべきなのか?」といった理由を理解してもらう必要があります。
つまり、これら3つの理由の答えとなる主張や情報を伝え、聴き手の態度変容を起こせることこそが、優れたプレゼンの条件なのです。
そして、聴き手の態度変容を生むためには、以下の3つの要素が必要となります。
優れたプレゼンテーションを実現する3大要素
- メリット(聴くべき理由)の提示
- 話者や内容の信頼感
- 聴き手の心をつかむ伝達力
優れたプレゼンを実現するためには、プレゼンを聴くべき「メリット(聴くべき理由)」を提示するだけでなく、そのプレゼンを聴いてもよいと判断してもらうにふさわしい「信頼感」を高める。
そのうえで、聴き手の心をつかむ「トーク」をおこなう。
この3つの要素が掛け合わされて初めて、プレゼンは成功します。
ではここからいよいよ具体的なメソッドのご紹介です。
前述した3つの要素をカバーするためのメソッドを、順序立てて解説していきます。
2.聴き手の「メリット」を最大化する
プレゼンで最も重要なのは聴き手の「メリット」を最大化することです。
なぜメリットを最大化することが重要なのかを説くうえで、まずは私たちはなぜプレゼンをするのか?という問いに触れておきましょう。
プレゼンテーションの5つの目的
私たちがプレゼンをする目的は、大きく分けて以下の5つです。
プレゼンで達成したい5つの目的
- 興味の喚起
- 説得
- 納得感の醸成
- 意思決定の支援
- 行動の喚起
ひとつ目の目的は、聴き手の興味を喚起することです。
たとえば、何かの製品をアピールし、「面白そうな製品だ」と思ってもらうことを目指します。
次の目的は、その製品がいかに優れているかを説得し「たしかに良さそうだ」と納得してもらうこと。
そして、複数の製品を比較検討している人に対して「こっちのほうが良いですよ」という意思決定の支援もする。
別の言葉を使うのであれば、クロージング(Closing)すなわち「選択肢を絞る」お手伝いをする。
そうしてようやく、聴き手に「購入したい」と思ってもらえる。
このように最終的に聴き手に行動を起こしてもらえれば、プレゼンの目的は達成されます。
そう、プレゼンの最終目的は、聴き手に行動を起こしてもらうことなんです。
では、聴き手の行動を喚起するうえで大切なことは何でしょうか?
それは「説得」と「納得感の醸成(じょうせい)」です。
説得とは、たとえば「この製品はこんなに役に立つんです」と説明すること。
いっぽうで納得とは「たしかにその話は信頼してもいいな」と相手の説明を受け入れる状態になったことを指します。
説得は話者側のアクション、納得は聴き手側の状態なわけです。
ここでなぜ、納得感の「醸成(じょうせい)」という言葉を用いているかというと、納得感は一気に高まるものではないからです。
説明を聴くなかで相手への信頼感が徐々に高まり、相手の意見を受け入れてもいいという心の土壌が整備される、それはまるでお酒が発酵するようなプロセスです。
だからこそ私は「醸成(じょうせい)」という言葉を用いています。
プレゼンテーションでは「お得感」を伝える
さてここで、「説得」と「納得」という2つの漢字にあらためて注目してみてください。
この2つの漢字には、共通して含まれる「ある漢字」がありますよね。
それは・・・「得」という漢字です。
実はプレゼンにおいては、この「得」という漢字の存在に気付けているかどうかが重要です。
なぜなら、聴き手を説得し、その提案に納得してもらうためには、その提案を受け入れることがいかに「お得」かを説いたうえで、「たしかにお得だ!」と感じてもらう必要があるからです。
これはつまり、そのプレゼンに「お得感」があるかどうかを考えるということです。
ここでいうお得感とは、スーパーの安売りセール的なオトク感ではなく、もっと大きなお得感。
「何か大きなものを得られる」という感覚、すなわち「メリット」や「ベネフィット」のことを指すと考えてください。
私たちはその提案を聴くことで明らかなメリットやベネフィットを得られるのであれば、どれだけプレゼンが聴きづらくてわかりづらくても、なんとかして聴こうとします。
その提案を聴かないと損をするわけですから「これは絶対に聴かなければ!」と前のめりになるわけです。
ここで、メリットとベネフィットという2つの言葉の意味を整理しておきましょう。
- 「メリット」の意味
- 具体的な特長や強み、利点のこと。
たとえば、この記事を読むメリットは「効果的なプレゼンテーションの技術が学べる」こと。 - 「ベネフィット」の意味
- メリットを享受した結果得られる価値や効果、将来得られる利益のこと。
たとえば、この記事を読むことによるベネフィットは「ビジネスでの成果が上がる」「自信をもってプレゼンできるようになる」こと。
メリットとベネフィット、この2つの言葉は一見似たような意味に思われるかもしれませんが、具体的には上記のような違いがあります。
ただ今回の記事では、説明を簡略化するために、ベネフィットという言葉を用いず、あえて「メリット」という言葉に集約して解説していきます。
聴き手がメリットを感じる5つの提案パターン
さて、プレゼンでは「お得感」すなわち「メリット」を感じてもらうことが大切だとお話ししました。
では、聴き手にメリットを感じてもらうためには、どのように提案を組み立てるとよいのでしょうか?
そこで覚えておいてほしいのが、以下の5つの提案パターンです。
これらは、聴き手がメリットを感じる提案のパターンをまとめたものです。
■聴き手がメリットを感じる5つの提案パターン
- 問題解決につながる提案
- 欲求を実現できる提案
- 自己成長につながる提案
- 損失を回避できる提案
- 気持ちが高揚する提案
プレゼンを企画する際は、これら5つのパターンに当てはまる内容を意識します。
ただし、どれかひとつのパターンのみに当てはまればよいのではなく、できれば複数のパターンに当てはまる内容を目指しましょう。
多くのパターンに当てはまるほど魅力的な提案になります。
これら5つのパターンに共通しているのは「聴き手目線」の提案であることです。
自分たちが伝えたいことよりも、聴き手が知りたいことを伝える、そうすれば、聴き手に「お得!」と思ってもらえるプレゼンにつながります。
・・・とはいえ、そもそもプレゼンをする目的は、自分たちが伝えたいことを伝えることです。
そのため「聴き手のニーズばかり考えていたら、自分たちが伝えたいことを伝えられないじゃないか!」というツッコミはあるでしょう。
そのツッコミが起こるのは至極当然ですし、そのツッコミへのアンサーはこのあときちんと用意していますので、後ほど解説させてください。
まずは、成功するプレゼンとは、とにかく「聴き手目線」でお得感を演出するのだ!と覚えておいてください。
ちなみに、プレゼンテーション(Presentation)の語源はご存じですか?
実はプレゼント(Present)という言葉から来ているんです。
だからこそ、プレゼンの内容は聴き手がもらってうれしいプレゼントを渡すように考えるべきなのです。
もらっても邪魔になるようなプレゼントは渡すべきではないのです。
プレゼンテーションを設計するための4W1H(6W1H)のフレームワーク
プレゼンは「聴き手に手渡すプレゼント」のように考える。
その前提を踏まえていただいたうえで、以下の図を見てください。
以下の図は、プレゼンテーションを設計するための4W1H(6W1H)のフレームワークです。
プレゼンを設計する際は、この4W1H(6W1H)のフレームワークに沿って内容を考えれば、聴き手目線のプレゼンを実現できます。
まずは、「何(どんな情報)を伝えたいのか」というWhat、それを「誰に伝えたいのか」というWhom、そして「何のために伝えたいのか(何のためにそのプレゼンを聴くべきなのか)」というWhyを考え抜きます。
そのうえで「誰(どんな話者)が伝えるのか」というWho、「どのように伝えるのか」というHowについて考え、必要に応じて「いつ伝えるのか」というWhen、「どこで伝えるのか」というWhereも考えます。
ちなみに、このフレームワークのなかで最も重要なのが、「誰に伝えたいのか」というWhom、そして「何のために伝えたいのか(何のためにそのプレゼンを聴くべきなのか)」というWhyです。
なぜなら、この2つこそが、その提案が誰にとってどんなメリットがあるのかを示す要素だからです。
たとえば以下は、上記のフレームワークを用いて考えたプレゼンの内容の一例です。
6W1H | 問い | 詳細 |
---|---|---|
What | 何を? | 「ウェブライダー松尾のランディングページ制作のノウハウ」を |
Whom | 誰に? | 「Webマーケティングの成果を上げたいマーケター」に |
Why | 何のために? (何がお得か?) |
ムダな広告費をかけずに、効率良く成果を上げてもらうために (ムダな広告費をかけずに、効率良く成果を上げてもらえるようになる) |
Who | 誰が? | 「ウェブライダー代表の松尾茂起」が |
When | いつ? | 「2024年9月14日(土)の14時~14時35分の35分間」に |
Where | どこで? | 「ベルサール神田(300人収容のホール)」で |
How | どう伝えるか? |
|
上記の例では、「ランディングページ制作のノウハウ」を、「Webマーケティングの成果を上げたいマーケター」に伝えようとしています。
ただ、もし伝えたい相手が「ランディングページ制作のノウハウなんて知りたくないよ。もっとほかのノウハウを教えてくれよ」と思っていたとしたらどうでしょうか?
こちらが伝えたい内容に興味をもってもらえませんよね。
そこで重要となるのが、その内容(What)を、なぜその聴き手(Whom)が聴かなければならないかの理由(Why)づくりです。
それは、提案内容を聴き手の興味のあるテーマと関連付けることでもあります。
たとえば、聴き手が「文章の書き方に興味がある」のなら、「ランディングページ制作のノウハウを極めることは、文章作成の極意を学ぶことにもつながる」と伝えます。
そうすれば、「文章作成のノウハウ習得につながるのなら、話を聴いてみてもいいな・・・」という態度変容が起こるはずです。
提案内容を聴き手の興味のあるテーマと関連付ける
プレゼンの内容を聴き手のニーズと関連付けできれば、どんな内容であっても興味をもってもらえるようになります。
以下の図を見てください。
以下の図は、自分たちが話したいこと(Will)、話せること(Can)、そして、聴き手が知りたいこと(Need)をそれぞれ円で表した図です。
プレゼンの内容を考える際は、この3つの円が重なる領域を最大化させることも意識しましょう。
この3つの円のうち最も意識すべきは、聴き手のニーズを表す「Need」です。
「Will」や「Can」は話者側の都合ですので二番手です。
とはいえ「Will」や「Can」をおろそかにしていいわけではありません。
伝えたいという思い(Will)があるからこそ熱量高く話せますし、わかりやすく話せる(Can)内容だからこそ聴き手にしっかりと伝わります。
あくまでもバランスが重要です。
ここまでの話をまとめると、プレゼンでは聴き手のニーズに関連付ける力の有無が成否を分けます。
関連付けが苦手な方は、以下のフレーズを意識的に使いましょう。
■聴き手のメリットに関連付けるためのフレーズ
- あなたの●●という課題解決につながりますよ
- あなたの●●という欲求を実現できますよ
- あなたの自己成長につながりますよ
- あなたが抱えるであろう損失を回避できますよ
- このプレゼンはきっと楽しめますよ
上記のフレーズの●●の内容を聴き手のニーズに合わせられれば、聴き手は前のめりになってくれます。
また、「自己成長につながる」「損失を回避できる」「楽しめる」といったフレーズは、多くの人の「潜在ニーズ」に響くパワーフレーズです。
聴き手ならではのニーズに応えることも大切ですが、多くの人が抱える潜在ニーズを満たすことも重要です。
そこで、次の表を見てください。
実は私たち人間には、以下のような13種類の根源的な欲求=潜在ニーズが存在します。
聴き手の13の根源的欲求(潜在ニーズ)を知る
以下の表は、私が代表を務める「株式会社ウェブライダー」のコンサルティング事業でも用いているものです。
私たちは過去さまざまな業界のマーケティングを支援してきた過程で、人間の根源的な欲求は以下の13のカテゴリに分けられることに気付きました。
人によってどの欲求を重視しているかは異なりますが、プレゼンの内容を、以下の13の欲求に関連付けられれば、ほとんどの人が前のめりになってくれるでしょう。
欲求 | 詳細 | |
---|---|---|
1 | 安全でいたい | 生命の危険を減らしたい、自分の身を安全な場に置きたい、危害を加えられたくない |
2 | 健康でいたい | 病気や怪我の不安から解放され、健康に過ごしたい |
3 | ストレスを減らしたい | ストレスを減らしたい、疲れを回避したい、面倒を無くしたい、精神を安定させたい |
4 | 協力者を得たい | 自分に賛同してくれる人を得たい、協力してくれる人を得たい、仲間を得たい |
5 | 地位を得たい | 揺るがない安定した地位を得たい、自分だけの特別な地位を得たい、役割が欲しい |
6 | 優位に立ちたい | 他者よりも権力をもちたい、優越感を得たい、自慢したい、他者に慕われたい |
7 | 自由を得たい | 束縛や邪魔をされたくない、自分の思い通りに行動したい、選択肢を奪われたくない |
8 | 快楽を得たい | 心地良い状態になりたい、気持ち良くなりたい、楽しい状態になりたい、ワクワクしたい |
9 | 進歩したい | 成長したい、新たなスキルを得たい、達成感を得たい、良い結果を出したい |
10 | 自己愛を高めたい | 自己顕示したい、自己表現したい、自分をもっと好きになりたい、自分をもっと褒めてあげたい |
11 | 子孫を残したい | 愛する人との結晶としての子どもが欲しい、自分が生きた証としての子孫が欲しい、自分の作品を残したい |
12 | 自分の世界を拡張したい | 自分の世界を拡張したい、違う自分に出会いたい、人生を拡張したい、推しを通じて自分の理想を投影したい |
13 | 愛でたい | 愛すべきものを愛し続けたい、守るべき存在を得て守り抜きたい、他者に愛情を与えたい |
たとえば、今あなたが読んでいるこの記事をより多くの人に読んでもらいたいとしましょう。
その場合、「この記事を読めば、伝えたいことが伝わらないというストレスが無くなりますよ」「伝えたいことがしっかり伝わることで、あなたの話に賛同してくれる味方が増えますよ」「他の人が知らないノウハウが手に入りますよ」といった訴求をすれば、より多くの人に興味をもってもらえるかもしれません。
(該当する欲求をハイライトしてみました)
ここでちょっとした小話を。
あなたのまわりにすごい営業パーソンの方はいらっしゃいませんか?
もし、そういう人がいるのなら、その人は自分の提案をさまざまな欲求に「関連付ける力」に長けているのかもしれません。
というのも、商品の価値を根源的な欲求に関連付けるトーク力があれば、どんな商品でも魅力的に訴求できてしまうからです。
(もちろん、その商品が営業トークの内容に合った品質を担保している必要はあります)
聴き手の状況を把握するための12の変数
ちなみに、聴き手にメリットを感じてもらうためには、聴き手は今どういう状況なのか?といった情報把握も必要です。
それは「誰に(Whom)」の解像度を高めることでもあります。
「誰に(Whom)」の解像度を高めるためには、以下のような12の問いをもち、聴き手のニーズや前提知識、立場、状況などを想定することが大切です。
聴き手の変数 | 例 | |
---|---|---|
1 | 顕在ニーズは? | ランディングページ制作の新しい視点が欲しい |
2 | 潜在ニーズは? | 成果をしっかり上げて社内で羨望の的になりたい、部下から尊敬されたい |
3 | 普段の関心事は? | 生成AIが広告業界にどんな影響を与えるかが気になっている |
4 | どんな立場か? | Webマーケティング事業部のマネージャー |
5 | 前提知識は? | ランディングページ制作に関わる基礎的な知識 |
6 | 過去の経験は? | これまでに100を超えるランディングページのディレクションをおこなってきた |
7 | よく使う言葉は? | LPO、CVR、UX、ROI、ChatGPT、Claudeなど |
8 | 信用する情報源は? | MAツールの大手ベンダーが運営するオウンドメディア、業界著名人のSNS上での発信 |
9 | どんな状況か? | 年内に成果を上げなければならない状況(残り4ヶ月) |
10 | 今の感情は? | 成果が思うように伸びておらず焦っている |
11 | 価値観は? | 小手先の仕事よりも、顧客に丁寧に寄り添う仕事をしたいと常々考えている |
12 | 行動するうえでの障壁は? | 社内の承認プロセスの長さ、チームに浸透させるためのトレーニングの実施負荷 |
聴き手に関する解像度が高まれば、プレゼンの内容を聴き手に最適化することができるようになります。
すべてのプレゼンは、相手ありきでおこなわれるものです。
だからこそ「誰(Whom)に」聴いてもらいたいかを考え抜くことが大切です。
さて、ここまで「聴き手のメリットを最大化する」という話をしてきました。
ここからは、自分たちの話をいかに信用してもらうかという視点で解説していきます。
聴き手にとってどれだけメリットのある提案であっても、提案の内容や提案している人物を信用してもらわなければ、受け入れてもらえません。
だからこそ、いかにして信用してもらうか、信頼感を高められるかが大切です。
3.話者や内容の「信頼感」を醸成する
聴き手に信用してもらううえで大切なのは、「誰(Who)」が話すか、つまり話者が何者かを明らかにすることです。
そこで重要となるのが「自己紹介」です。
自己紹介を通じて、聴き手に「この人は信頼できる」「この人の話なら聴く価値がある」と思ってもらうのです。
たとえばこの記事の冒頭で、私は自己紹介を丁寧におこないました。
この記事を書いている私がどんな人物なのかを知っていただくことで、「こういう経歴の人が書いている記事なら、読んでみてもいいかな」と思ってくださったのではないでしょうか。
そのように自己紹介は、まだ関係値を築けていない相手からの信頼を得るうえで必須ともいえる情報です。
さまざまな方のプレゼンを聴いていると、自己紹介をサクッと済まそうとする方は多いのですが、私の経験上、自己紹介はある程度丁寧におこなったほうが望ましいと考えます。
自己紹介が簡素なものになると、人となりや「なぜ、その人はその話をするのか?」といった文脈や背景情報が伝わらず、信用の低い状態からのスタートとなってしまいます。
ただし、自己紹介はただすればよいわけではありません。
自己紹介はプレゼンの内容との関連性を意識しましょう。
プレゼンとの関連が弱い自己紹介は、ただの自分語りや自慢話のように聞こえてしまい、聴き手にとってのノイズとなります。
むしろ悪い印象を与えてしまうこともあるため、プレゼンの内容との関連性には注意を払いましょう。
ストーリーを語ることで、信頼感が高まる理由
また、「自己紹介をストーリー形式で語る」ことも効果的です。
ストーリーを語ることで、聴き手は話者の人生を追体験でき、とくに苦労を伴った経験は共感を呼びやすくなります。
そして、話者の過去の行動や決断が一貫していることを示せれば、聴き手のなかで「この人は意志が固いから信頼できる」という安心感が生まれます。
■ストーリーを語ることで、信頼感が高まる理由
- 過去がオープンになることで、透明性が高まる
- 映像をイメージでき、相手の過去を疑似体験できる
- 苦労した経験は、共感につながりやすい
- その人の「本音」や「信念」を伝えやすい
- 過去の行動や決断の一貫性をアピールできる
主観よりも事実情報を多く伝える
また、プレゼンの信頼感を高めるには、話者の信頼感だけでなく「扱う内容」の信頼感を高めることも大切です。
そのためには、「私はこれが良いと思います」「私はそれをオススメします」といった主観的な意見を扱うだけでなく、なぜそう言えるのかの根拠となる「事実情報(Fact)」をできるだけ伝えましょう。
事実情報とは、科学的な事実や統計データなどを指し、同じ条件であれば誰が検証しても同じ結果を得られる「再現性」を伴った情報のことです。
私たちは、誰かの意見よりも、事実情報(Fact)に信頼を置きやすいものです。
何かを主張する際には、その主張を支える根拠=事実情報(Fact)を合わせて提示することを忘れないでください。
さて、ここまでの内容はプレゼンを企画するうえでの大枠となるノウハウでした。
ここからは、伝わるプレゼンを構成するメソッドを解説していきます。
4.プレゼンテーションを構成するコツ
ここからの内容は、先ほど紹介した4W1H(6W1H)のフレームワークのうち、「How(どう伝えるか?)」にフォーカスしたものです。
突然ですが、あなたは誰かのプレゼンを聴いていたとき「めっちゃ眠い・・・」と感じたことはありませんか?
眠くなるプレゼンは苦行ですよね・・・。
眠気を誘うプレゼンは、話者の伝えたいことが頭に入ってこないだけでなく、時間をムダにしたと感じてしまいます。
では、どのようなプレゼンをすれば、眠くならないプレゼンを実現できるのでしょうか?
そこで意識してほしいのが、以下の6つの要素です。
■眠くならないプレゼンの6要素
- 聴き手にとって価値ある情報を提供する
- 聴き手がスムーズに理解できるように説明する
- 主張の「一貫性」と「論理の連結性」を重視する
- 聴き手の感情に訴えかけ、共感を醸成する
- 聴き手との双方向のコミュニケーションを意識する
- 聴き手に適度な緊張感を与える
これら6つの要素を意識することで、眠いプレゼンになる事態は避けられます。
眠くなる原因に多いのが、「聴くべき理由がよくわからない」というものです。
聴くべき理由がわからないと、聴き手はどんどんモチベーションを下げてしまいます。
だからこそ、聴き手に対して「この提案はあなたのために重要なんです」「あなたに関係があることなんです」ということを反復して伝え続ける必要があります。
また、「話者が何を言っているのかがわからなくなった」という理由で眠くなるケースもあります。
その場合は、とにかくわかりやすく話すことと、話す内容の「一貫性」や「論理の連結性」を担保することが求められます。
さらには、聴き手がすっかり安心してしまうことで眠くなることもあります。
そうならないためには、プレゼン中に聴き手に質問を投げかけたり、ワークショップを交えたりして、聴き手が油断しないような緊張感を高める演出を採り入れることも有効です。
プレゼンをするうえでは上記の視点をもっておいていただきたいのですが、覚えるのがちょっと大変ですよね。
そこでオススメしたいのが、「ハイキングコース型メソッド」です。
プレゼンの設計はハイキングコースづくりを意識する
優れたプレゼンテーションとは、ワクワクする「ハイキングコース」である。
これは私の持論です。
ハイキングとは、皆さんも学生時代にきっと経験があるであろう、あのハイキングです。
みんなでひとつの目的地を目指して、ワイワイしながら歩く、あのハイキングです。
実は、優れたプレゼンテーションを組み立てることは、ワクワクするハイキングコースづくりと同じなのです。
なぜそんなことがいえるのかを説明していきます。
まずは理想のハイキングコースについて考えてみましょう。
理想のハイキングコースとは以下のようなコースです。
■理想のハイキングコース
- ゴール(目的地)がどこかわかる
- ゴール(目的地)への期待値が高い
- 迷わないよう、案内板が用意されている
- 道が歩きやすい
- 道中に楽しめるスポットが色々ある
- 必要に応じて、ガイドが付き添ってくれる
この理想のハイキングコースの条件にプレゼンテーションの構成を当てはめてみると、以下のように、実に理に適ったノウハウが見えてくるのです。
コースの特長 | プレゼンでの表現 | |
---|---|---|
1 | ゴールがどこかわかる |
|
2 | ゴールへの期待値が高い |
|
3 | 案内板が用意されている |
|
4 | 道が歩きやすい |
|
5 | 道中を楽しめる |
|
6 | ガイドが付き添ってくれる |
|
いかがでしょうか。
プレゼンをハイキングコースにたとえて考えることで、プレゼンに求められる条件が上手く整理できました。
ではここからは、この「ハイキングコース型プレゼンメソッド」を用いて、聴き手を惹(ひ)きつけ、眠気を吹き飛ばすプレゼンの組み立て方を具体的に解説していきます。
【ハイキングコース型メソッド その1】
プレゼンのゴール(目的)を伝える
ハイキングコースには明確な目的地があります。
どこを目指して歩くのかが明確であり、行く先がわからずに歩く人はいません。
優れたプレゼンも同じです。
そのプレゼンが「聴き手をどんなゴールへ導くのか」が明確にわかります。
それはつまり、プレゼンを聴くメリット=聴くべき理由がわかるということです。
そこで意識してほしいのが、プレゼン全体を「PREP法」を用いて構成することです。
PREP法とは、Point (結論)→Reason (理由)→Example (具体例・補足)→Point (結論の繰り返し)という構成で情報を伝えるフレームワークです。
このPREP法を用いて内容を組み立てることで「そのプレゼンは何を伝えたいのか?」が伝わりやすくなります。
たとえば、以下はPREP法を用いて情報を組み立てた一例です。
■PREP法を用いた伝え方のサンプル
●Point(結論)
今回、Webマーケターの皆さんにプレゼンのスキルをお伝えするのは、プレゼンが上手くなれば、Webマーケティングの成果が劇的に向上するからです。
●Reason(理由)
プレゼンのスキルには、情報を効果的に伝えるための極意が詰まっています。
Webマーケティングにおいては、情報をいかに相手に上手く届けられるかが重要。
プレゼンのスキルを使えば、より説得力をもった情報伝達が可能となるのです。
●Example(具体例・補足)
たとえば、商品紹介の文章を書く際に、今回のセミナーで取り上げる「ハイキングコース」のメソッドを当てはめてください。
商品の魅力が具体的かつ明確に伝わる「訴求文」をカンタンに書けるようになるはずです。
●Point(結論の繰り返し)
だからこそ今回、私は皆さんに、プレゼンのスキルをお教えしたい。
今回皆さんが手に入れるノウハウは、今日から使えるものばかり。それでは参りましょう。
その主張が何を伝えたいのか、なぜその主張を聞くべきなのかがわかりやすいですよね。
プレゼンでは最初に「どんな情報をなぜ伝えたいのか?」という「プレゼンの目的」をPREP法を用いて伝えます。
そのあとで、必要な情報を足していく、それが基本の構成です。
また、プレゼンの中ではいくつかの要点を話すことになりますが、その要点を伝える際にもPREP法を用いてください。
「プレゼン全体を貫く大きなPREP」を最初に伝え、そのあとで「個々の要点や見出しごとに小さなPREP」を伝えていくイメージです。
また、PREPのPという字は「Point(ポイント)」を表しています。
このPointをハイキングコースに例えると「目的地」や「中間ポイント」という意味になります。
プレゼンの聴き手は、プレゼンを聴き続ける中で「自分はなぜこのプレゼンを聴いているのだっけ?」と迷ってしまうことがあります。
そんなとき、目的地をこまめに提示することで、聴き手を迷わせないプレゼンが実現できるのです。
【ハイキングコース型メソッド その2】
ゴールの期待値を高める
ゴールを伝える際には、そのゴールを目指したくなるように、聴き手のモチベーションを高めましょう。
ハイキングにのぞむ際、ゴールに広がる景色が絶景だったり、ゴールに美味しい食事が用意されていたりすると、「よっしゃあ!頑張って、ゴールするぞ!」と気合いが入りますよね。
プレゼンも同じです。
ゴールにどんな素敵なことが待ち受けているのかをなるべく早く伝えておくのです。
そのためには、以下のような感じで、プレゼンを聴くメリットやベネフィットを早めに伝えましょう。
■ゴールへの期待値を高める説明の例
- これまで、他社の講座を受講されてきた方にとって、初めて知るノウハウが沢山出てきます
- 通常8時間かかる講義の内容を、2時間でわかりやすく伝えます
- このノウハウさえあれば、制作業務が効率化し、空いた時間を用いて新しい企画を考えられるでしょう
- 今回のノウハウを用いたことで、売上が昨対比270%アップしました
- 今回のノウハウでつくられたページの平均滞在時間が1.3倍になりました
ちなみに、メリットやベネフィットを伝える際はできるだけ具体的に伝えましょう。
とくに「プレゼンの内容にしたがって行動した結果、これだけの成果が上がった」という事実情報(Fact)は、プレゼンの信用度が増すだけでなく、モチベーション喚起にもつながります。
事実情報を伝える際は、「このノウハウを用いたことで、昨対比270%の売上アップが実現できた」「ページの平均滞在時間が1.3倍になった」というように、数字を用いることをオススメします。
【ハイキングコース型メソッド その3】
案内板を用意する
歩きやすいハイキングコースには親切な案内板が用意されているものです。
案内板があることで、参加者はどこを歩いているかがわかるようになり、安心してゴールを目指せます。
その視点をプレゼンにも活かすのです。
聴き手はプレゼンを聴き続けるなかで「この話は何について解説しているのだっけ?」「今、なぜこの話を聴いているのだっけ?」と迷うことがあります。
そのような迷いを生じさせないためにも「ブリッジや要約を入れる」「大事なことは何度も反復して伝える」「現在地を伝える」といったアクションをおこないます。
具体的には、プレゼンの中で以下のようなフレーズを用います。
■ブリッジや要約で使えるフレーズの例
- ここまでは●●について話してきました。ではここからは、■■について話していきます。
- ここで一度振り返りましょう。ここまで私は●●について話してきました。
- さて、●●はなぜ■■だといえるのでしょうか?その理由について、話していきます。
- ここまでの内容をまとめると、つまり●●ということです。
- 言い換えるのであれば、要するに、●●ということなんです。
また、大事なメッセージは、何度も繰り返し伝えることが大切です。
単に同じメッセージを繰り返すと飽きてしまうため、語彙や伝え方を変えて反復して伝えましょう。
ちなみにお気付きかもしれませんが、この記事内でも、大事なメッセージはさまざまな表現を用いて反復して伝えています。
(たとえば「聴き手のメリットが大事」「聴くべき理由が大事」「お得感が大事」といったようにです)
【ハイキングコース型メソッド その4】
道を歩きやすくする
通常のハイキングコースは歩きやすく整備されています。
よって、プレゼンにおいても“歩きやすいプレゼン”を意識しましょう。
“歩きやすいプレゼン”を実現するには、指示代名詞をできるだけ使わないことや、論理の「一貫性」や「連結性」の担保が重要です。
まずは「指示代名詞をできるだけ使わない」というノウハウについて解説します。
指示代名詞(「これ」「それ」「あれ」など)は、できるだけ具体的な表現に置き換えましょう。
そうすることで、話者が今どの話題に触れているかがわかりやすくなり、プレゼンの流れをスムーズに追うことができます。
また、聴き手がプレゼンの内容を一部聞き逃していたとしても、話の筋をつかみやすくなります。
たとえば、「あのメソッド」という表現ではなく「あのハイキングコース型プレゼンメソッド」というように、その指示代名詞が何を指しているのかを具体的に表現します。
実はこの記事のなかでも指示代名詞の使用には細心の注意を払っていますので、ぜひ記事内の指示代名詞をチェックしてみてください。
また、“歩きやすいプレゼン”を実現するには、プレゼンの内容の「一貫性」と「論理の連結性」を担保することも重要です。
「一貫性の担保」とは、自分の主張をコロコロと変えないということです。
「さっきまで言っていたことと違う・・・」となってしまうと、聴き手が混乱するだけでなく、不安に感じてしまいます。
そのためプレゼンでは、ひとつの主張をできるだけ貫き通すことを意識してください。
(もし横道に逸れたとしても、元の主張にすぐに戻って来られれば問題ありません)
また、「論理の連結性」とは、プレゼンを進める中で取り上げる情報や主張を、すぐ前に伝えた情報や主張に関連付けて伝えることを指します。
電車の車両の連結や、格闘ゲームにおけるコンボを想像してください。
先に伝えた情報や主張について、なぜそのように言えるのかという「理由」や、それはどういうことなのか?という「例示」を重ねてゆくことで、論理の連結性が担保されます。
論理の連結性というと難しく思われるかもしれませんが、カンタンにいえば、基本的には先述した「PREP法」を意識すればよいだけです。
さて、ここで「導く」という漢字に注目してください。
導くという漢字をよーく見てみると、「道」という漢字に「寸」という漢字がくっついたものだとわかります。
「寸」は“ごくわずかな長さ”という意味を指しますから、プレゼンの要点、すなわち「ポイント」という意味に捉えることができます。
この解釈を用いれば、プレゼンで聴き手をゴールに導くことは、「寸=ポイント」を目印に道案内していくことだといえます。
つまり「寸=ポイント」を上手く配備できるかどうかが、ゴールに導くプレゼンにおいては重要なのです。
そして、それらの「寸=ポイント」をつなげるために必要なのが「接続詞」です。
私がここで声を大にしてお伝えしたいことがあります。
それは「接続詞」にこだわってほしいということです。
文章の書き方に関する本のなかには「接続詞は省略したほうがよい」と解説しているものが多くあります。
しかし、私の持論としては、接続詞はできるだけ省略しないほうが望ましいと考えます。
なぜなら、接続詞があるからこそ、論理展開がわかりやすくなり、伝えたい内容がスムーズに伝わりやすくなるからです。
さらには接続詞があることで、トークもしやすくなります。
「だから」「そして」「たとえば」「しかし」「ちなみに」などの接続詞をしっかり発音することで、非常にわかりやすいプレゼンになるのです。
そもそも接続詞は車の運転でいう「方向指示器(ウインカー)」のような効果をもち、聴き手に次の進路を伝える役目があります。
つまり、接続詞を用いることは、聴き手を事故らせないための気遣いなのです。
この話をまとめると、優れたプレゼンは、複数の「ポイント」が「接続詞」によってつなげられている、ゴールまでの道のりがわかりやすい一本道だといえます。
プレゼンのなかで扱う内容は、すべて同じ一本道を構成する要素であるべき。
そのような感覚でプレゼンの内容を組み立てるようにしてください。
また、“歩きやすい一本道”をつくるうえでは、何を話して何を話さないかの線引きも重要です。
そこで役に立つのが「ピラミッドストラクチャー」という思考フレームワークです。
このピラミッドストラクチャーはロジカルシンキングで使われるフレームワークのひとつで、ひとつの主張に対して、その主張を支える「根拠」や「理由」を整理するためのものです。
主張と関連性のない情報を削ぎ落とし、主張を支える情報のみに限定することで、主張の幹を太くし、“歩きやすい一本道”をつくれます。
プレゼンの内容を組み立てる際には、ぜひこのピラミッドストラクチャーを用いてみてください。
ではここで、“歩きやすいプレゼン”において必須となる「聴き手の心をつかむトーク」のメソッドについて深掘りしていきましょう。
5.聴き手の心をつかむトークをする
プレゼンにはトークが必要です。
そして、“歩きやすいプレゼン”を実現するには、聴き手の背中を押し、ゴールへ導くトークスキルが求められます。
トークが苦手だからといって、スライドでなんとかしようとしてはいけません。
むしろ、スライドはサブ(脇役)であり、トークこそがプレゼンの主役なのです。
そう、優れたプレゼンとは話者のトークスキルで引っ張っていくプレゼンなのです。
トークが便利なのは、あらかじめ用意したプレゼンの内容のウケが悪くても、その場で内容を調整できることです。
また、自分の感情や熱意を声に乗せて伝えられるため、聴き手の心に響く情報伝達が可能となります。
トークならではの強みをざっと整理するだけでも、以下のような5つの強みがあります。
■トークならではの5つの強み
- 聴き手の反応を見ながら、内容を柔軟に調整できる
- 自分の感情や熱意を声に乗せて伝えられる
- 聴き手と双方向のコミュニケーションを構築できる
- 声のトーンやテンポを変えて、抑揚をつけられる
- 表情やジェスチャーを交えて伝えられる
だからこそ、プレゼンはトークを軸に組み立てるべきなのです。
そのためには前述したように、スライド資料をあくまでもサブ(脇役)として扱う意識が大切です。
いざプレゼンをする!となった際に、まずはスライドをつくらなければ!と、スライド作成のことで頭がいっぱいになってしまう人がいますが、あれは大きな間違いです。
何度も言いますが、大事なのはトークです。
極論、スライドがなくても、トークの力だけでプレゼンは成立させることができます。
スライドの内容にこだわることでトークがおざなりになるくらいなら、スライドの作成にかける時間をすべてトークの磨き込みに使ってください。
スライド資料の配布は必要最低限にする
そして、その流れで注意してほしいのは、プレゼン時のスライド資料の配布です。
私は外部のセミナーで登壇する際、よく主催者から「スライド資料を事前に配布してほしい」という要望をいただくのですが、実はスライド資料は事前に配布しないほうがよいと考えています。
なぜなら、スライド資料を事前に配ってしまうと、プレゼンのネタバレになってしまいますし、目線が手元の資料に移ってしまうことで、私の表情を見てもらいにくくなるからです。
また、「話を聴かなくても資料さえ手に入ればいいや」という謎の安心感も生まれてしまい、プレゼン中にスライド資料に書かれていない貴重な情報を話したとしても、その情報を聴き手が聴き逃してしまう恐れが出てきます。
このように、スライド資料を事前に配ることは、聴き手にとって、プレゼンから得られる体験価値を減らすことにつながりかねないのです・・・!
プレゼンで大切なのは、いかにしてこちらのトークに集中してもらうか、です。
そのためには、事前の資料配布を辞めるか、資料の配布は要点がまとまったアジェンダ程度に留めておいたほうがよいでしょう。
資料を配付しないということは、トークでプレゼンを引っ張ってゆく覚悟をもつということでもあります。
聴き手に前を向き続けてもらえるような魅力的なトークを目指しましょう。
・・・とはいったものの、「トークに自信がない!」という方は多いと思います。
普段話し慣れていないと、どうしても緊張してしまいますし、噛んだり、言葉のチョイスに失敗したりすることもあるでしょう。
ただ、そんな心配ばかりをしていたら、いつまで経ってもトークが上手くなりません。
そこで意識してほしいのが、上手く話そうとするより、聴き手をゴールへ導くことを意識することです。
何度も言うとおり、プレゼンの目的は聴き手をゴールへ導くことです。
つまり、話者つまりプレゼンターは、ゴールへ導く「ナビゲーター」であるともいえます。
極端な話、聴き手をゴールへ導くナビゲーターとしての役目をまっとうできれば、トークで噛もうが、拙い表現をしようが構わないのです。
そして、ナビゲーターとしての役目をまっとうするためには、歩きやすい道を選ばなければなりません。
そこで重要となるのが「トーク内容」の作り込みなのです。
トーク原稿の作成を検討する
以下の図を見てください。
以下はトークを成功させるうえで大切な要素を順序立ててまとめた図です。
トークは内容、言葉選び、トーン・テンポ・抑揚、演出といった要素で構成されますが、最重要なのは何を言うかの「内容」です。
そこでオススメしたいのが、トーク内容を磨きあげるために、喋る内容を「トーク原稿」に落としこむことです。
トーク原稿をつくる際は、主張の「一貫性」を担保した筋のよい原稿をつくってください。
ただ私としては、トーク原稿ありきのプレゼンは原稿の棒読み状態になるリスクがあるため、本当はあまりオススメしたくありません。
しかし、プレゼンに慣れるまでは、トーク内容を客観視するためにもトーク原稿をつくっておいたほうがよいのです。
作成した原稿がわかりづらい、面白くないのであれば、トーク内容がイマイチになるリスクが高まります。
その場合は、原稿の時点で面白くなるように改善します。
ただし、あくまでもトーク原稿は「内容の骨子を支える保険」のようなものです。
実際のプレゼンでは、聴き手の反応に応じてトークの内容を柔軟に変化させる力が求められるため、プレゼンに慣れるまでの暫定処置だと考えておきましょう。
慣れてくれば、トーク原稿のつくりこみはざっくりで構いません。
トークで使う言葉を4象限で考える
また、トーク原稿をつくる際は、どんな言葉を使うかの「言葉のチョイス」にも気を配りましょう。
そこで役に立つのが、以下の四象限の図です。
上記の図は、縦軸が「情報量多め」~「シンプル」、横軸が「理性的」~「情緒的」といった変数を表したもので、「情報量多め×理性的」「情報量多め×情緒的」「シンプル×理性的」「シンプル×情緒的」といった4つの切り口で言葉を考える際に役立ちます。
トークで用いる表現に迷った際は、上記4つの切り口を用いて考えてみてください。
そうするだけで、ひとつの情報を4つもの表現パターンで言語化できるようになり、トークに変化がつきます。
ひとつの情報を複数の表現を用いて伝えれば、先述したように、大事なことを反復して伝えることにもつながります。
また、言葉選びで気を付けなければいけないのが、聴き手のモチベーションを下げる言葉を使ってはいけないということです。
以下のような言葉をわざわざトーク原稿に書くケースは少ないと思いますが、以下のような言葉をうっかり使ってしまうと、自信がないように思われたり、聴き手にとって失礼な印象を与えてしまったりします。
聴き手のモチベーションを下げてしまう発言の例として覚えておいてください。
■聴き手のモチベーションを下げる言葉は発しない
- 私なんかの話をお聴きいただき、ありがとうございます
- 上手く喋れるかわからないですが、頑張ります
- 徹夜でスライドをつくっていました
- 時間が無いので、この内容は飛ばします(省略します)
トーン・テンポ・抑揚をコントロールする
そしてトークに欠かせないのが、トーン・テンポ・抑揚を意識することです。
トーンというのは声の音程、テンポはトークのスピード、抑揚とはトークの声量やテンションの変化すなわちダイナミクスのことだと考えてください。
これら3つの要素を意識することで、トークはより魅力的になります。
では、何を軸としてトーン・テンポ・抑揚をコントロールすればよいのでしょうか?
そこでオススメしたいのが、トーク内容を脳内で「装飾付きの文章」だと捉え、その文章の装飾をイメージした話し方をすることです。
装飾の種類には、フォントの種類を変える、フォントサイズを変える、フォントを太字にする、言葉同士の余白を空ける、文字間を空ける・・・といったものがあります。
たとえば、フォントサイズが大きな箇所は声を大きく発音したり、余白の多い箇所はあえて沈黙を加えたりします。
また、文字間を空ける箇所はゆっくり話し、逆に文字間が詰まった箇所は早口で話すようにします。
このように、装飾された文章をイメージすることで、どこを強調すべきか、どこをどんなスピード感で話すべきかなどがわかり、トーン・テンポ・抑揚に配慮したトークを実現できます。
また、トークのリズム感を鍛えるためには、トークの背景にBGMが流れていることを想像しながら話すのもオススメです。
背景にBGMが流れていると思えば、ノリよく話せるようになります。
(ただし、BGMを意識しすぎると、トークが変なノリになってしまうことがあるので、あくまでも少し意識する程度で大丈夫です)
フィラーを減らす、もしくは意図的に使う
また、聞き心地のよいトークを目指すうえでは、余計な雑音を入れないことも大切です。
そのためには、「えー」「えっと」「あのー」などの口癖(フィラー)をできるだけ使わないようにします。
フィラーとは、英語の「filler」のことで、日本語で「何かの隙間に入れる詰め物」を意味します。
「えー」「えっと」「あのー」といった、トークのなかでうっかり出てしまう意味をなさない短い言葉がフィラーです。
このフィラーを多く使ってしまうと、しっかりと準備していない印象を与えてしまうだけでなく、トークに稚拙さ(ちせつさ)を感じさせてしまいます。
とくに「えーっと」は、稚拙さを強く印象付けてしまうため、できるだけ避けましょう。
「えーっと」を使うくらいなら、「えー」「あのー」を使ったほうがまだマシです。
フィラーを防ぐためには、以下の2つのコツがあります。
■フィラーを防ぐコツ
- フィラーが出そうな場合は、あえて短い「沈黙」を置く
- 接続詞を先に言うことで、フィラーを出にくくする)
フィラーが出そうな場合は、あえて短い「沈黙」を置きます。
また、接続詞を先に言えば、次に意味のある言葉を発しようとする脳のメカニズムが働き、フィラーが出にくくなります。
ちなみに、フィラーの使用は完全にダメというわけではありません。
芸人さんや役者さんのなかには、あえてフィラーを「技術」として使っているケースがあります。
たとえば、台詞を饒舌(じょうぜつ)に話せてしまうことが演出におけるリアル感を損ねてしまっているという理由で、あえてフィラーを入れてリアル感を演出する、そんな目的で使われることがあるのです。
プレゼンも同じです。
あまりにもスラスラ~と喋れてしまうと、「この人、しょっちゅう同じことばっかり喋っているんだろうな」と思われて、プレゼンの価値を低く見積もられてしまうリスクがあります。
そういったリスクを回避するために、あえてわざとフィラーを入れたほうがよいケースもあるのです。
ただし、多すぎるフィラーは稚拙な印象を与えてしまいます。
フィラーを使う際は、無意識ではなく意識して使う、使用回数は制限する、といったルールを設けてください。
では、聴き手の心をつかむトークを実現する四つ目の要素である「演出」のテクニックについて掘り下げていきましょう。
ここから紹介する「演出」のテクニックは、先ほど取り上げた「ハイキングコース型メソッド」でいう「道中を楽しめる」ようにするためのノウハウでもあります。
トークを盛り上げる演出テクニック 6選
【ハイキングコース型メソッド その5】
道中を盛り上げる
ハイキングコースを最後まで歩き続けてもらうためには、道中を楽しみながら進んでもらう必要があります。
そのためには以下のような視点でトークを工夫してみましょう。
■トークを盛り上げるテクニック
- 知的好奇心を刺激する雑学を加えてみる
- クイズを加えてみる
- エンパシー以上にシンパシーを重視する
- 表情は豊かにし、ジェスチャーは顔の近くでおこなう
- あえて「沈黙」を使ってみる
- 擬音を使い、情報のニュアンスをイメージしやすくする
1.知的好奇心を刺激する「雑学」をトークに加えてみる
知的好奇心を刺激する「雑学」をトークに加えてみましょう。
たとえば、以下のようなジャンルの雑学をプレゼンの内容と関連付けて紹介すれば、聴き手が「思わぬ知識が手に入った」と感じ、お得感を演出できます。
カテゴリ | 例 |
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科学、自然、動物 |
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人体や生命 |
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恋愛や人間関係 |
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グルメ |
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歴史や文化 |
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偉人や有名人の名言 |
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ハイキングの目的はゴールを目指してひたすら歩くことですが、時には休憩をしたり、少し脇道に入ったりするのもいいものです。
休憩中にふと遠くを眺めたら美しい花畑が広がっていたり、脇道に入ってみたら可愛い動物と出会えたり。
そんな小さなハッピーサプライズをプレゼンに加えるのです。
そうすれば、プレゼンテーションのワクワク感がさらに高まるでしょう。
また、雑学を扱う場合は、プレゼンの内容に上手く組み込めるかどうかが腕の見せどころです。
プレゼンとまったく関係のない雑学は、聴き手にとってのノイズとなってしまいます。
そこで「類推思考(アナロジー思考)」を用いた関連付けを意識します。
類推思考(アナロジー思考)とは、以下の例のように、何かと何かを関連付けるための思考のことです。
物事の共通点を見出し、そこに橋を架けるようにロジックを組み立てるのです。
■雑学に類推思考(アナロジー思考)を用いた関連付けの例
(自由なアイデア出しこそが重要という考えを伝えるために)
アインシュタインの名言に「常識とは、18歳までに身に付けた偏見のコレクションである」というものがあります。
この名言のように、私たちが普段から「常識」だと思い込んでいるものは、かえって、私たちのアイデアを縛っているかもしれないのです。
(参加者がくしゃみをしたタイミングに合わせて)
今、どなたかがくしゃみをされましたが、くしゃみは1発で4キロカロリーを消費するそうです、すごい消費量ですよね・・・!
カロリーを消費させてしまった分、ここからのトークはカロリー多めで進めていきますので、皆さん、心のご準備をお願いします。
この「類推思考(アナロジー思考)」を使いこなせれば、さまざまな雑学をプレゼン内に採り入れられるようになります。
ただ、一朝一夕で身に付く思考でないため、日頃から何かと何かを関連付けて考えるトレーニングを重ねておきましょう。
2.クイズを加えてみる
プレゼンの内容を用いたクイズを挟み込むことで、聴き手にプレゼンの内容を思い出すきっかけを与えるだけでなく、適度な緊張感や知的興奮を与えることができます。
せっかくなので、この記事でもクイズを出してみましょう。
「説●力」「納●感」「お●感」。
これらの●には、この記事のなかで大事にしてきた一語が入ります。
あなたはわかりますか?(ここまで読み進めてきた方ならわかりますよね)
3.エンパシー以上にシンパシーを重視する
エンパシーとは「他者に共感する」こと。
いっぽう、シンパシーとは「他者から共感される」ことを指します。
コミュニケーションやマーケティングの業界では「エンパシー(他者へ共感すること)」の大切さがよく説かれますが、実は「シンパシー(他者から共感されること)」こそが、伝わるプレゼンにおいては重要なのです。
自分から働きかけなくても、聴き手が自然と前のめりになってこちらのトークを聴いてくれる状態、それがシンパシーが発動している状態です。
シンパシーを発動するには、「これが最高なんです!」「こんなに楽しいんです!」「こんなに快適なんです!」といったストレートな思いを表現する必要があります。
そうすることで、そのストレートな思いが聴き手に自然と伝播(でんぱ)するのです。
実は私たちの脳には「ミラーニューロン(別名:ものまね細胞)」という神経細胞があるといわれており、この細胞は、目の前の相手の反応を自分に鏡映し(ものまね)する力をもっています。
あなたも経験があると思いますが、誰かが目の前で涙を流していると自分もつられて泣きそうになってしまったり、誰かがうれしそうにしていると、自分もハッピーな気持ちになったりしますよね。
それこそがミラーニューロンの働きです。
このミラーニューロンの働きを意識しながらプレゼンすれば、聴き手に共感してもらえるプレゼンが実現できるのです。
たとえば、ジャパネットたかたの創業者である髙田 明氏のトークは、お客さまの購買意欲を引き出すトークとして有名でした。
そのトークの秘訣は、髙田氏自らが「この商品が本当に素晴らしいんです!」と商品愛を熱く語ることで、ミラーニューロンによるシンパシー効果が発動していたのだと思われます。
別のケースでは私の話で恐縮ですが、以前、Voicyという音声メディア内の番組にて、私が「おもしろい!」と大絶賛したマンガが飛ぶように売れていったことがあります。
2020年1月当時、私は『五等分の花嫁』というマンガにハマっていました。
このマンガは、主人公である男性がひょんなことから5つ子姉妹に家庭教師として勉強を教え、全員を高校卒業まで導くというストーリーで、恋愛要素もあるラブコメです。
当初よくあるラブコメかなと思って読み始めていたのですが、性格の異なる5つ子姉妹をそれぞれ理想のゴールへ導くというストーリーが、当時チームマネジメントに悩んでいた自分にとって多くの学びと気付きを与えてくれました。
そして「五等分の花嫁はマネジメントを学ぶうえで素晴らしい教材だ!」と大興奮しながら、自分の番組のなかで絶賛したのです。
松尾のVoicy「五等分の花嫁がマネジメントの観点で素晴らしすぎた」
すると、その番組を聴いてくださった方が次々とTwitterでコメントをくださいました。
「ここまで熱く語られたら読んでみたくなる」「松尾さんの興奮におされて思わずポチってしまった」、そのようなコメントが続出し『五等分の花嫁』が飛ぶように売れていきました。
おもしろかったのは、その番組での私の口調は「ヤバイ、良い意味でとにかくヤバイ」「このマンガは超最高」というようなまさに語彙が崩壊した状態だったことです。
そんな状態のトークだったのにもかかわらず、私の熱量がリスナーに伝播し行動を促したのです。
この経験をもとに、私はエンパシー以上にシンパシーこそが重要だと気付きました。
ぜひあなたも、自分の思いや熱量が伝わるような、シンパシーあふれるトークを実践してみてください。
ただし、熱く語りすぎると、それはそれで「熱すぎて鬱陶しい」と思われるリスクがあります。
そのため、基本は理知的なトークを大切にしつつ、時折、熱いトークを交えるようにするとバランスがよいかもしれません。
4.表情は豊かにし、ジェスチャーは顔の近くでおこなう
私たちは、他者の感情や意図を判断する際、言葉遣いや話し方だけでなく、表情や身振りといった「視覚情報」を頼りにするといわれています。
心理学の世界で有名な「メラビアンの法則」によると、私たちは「言葉(言語)」「声のトーン(聴覚)」「表情や姿勢(視覚)」という3つの要素を以下の割合で重視しているそうです。
■メラビアンの法則
- 言語(言葉そのもの):7%
- 聴覚(声のトーンや話し方):38%
- 視覚(表情や身振りなど):55%
この法則を意識するのなら、トークの際の表情や手振り身振りにはできるだけ気を遣ったほうがよいでしょう。
表情はできるだけ豊かにし、良い話をしているときは明るい顔で、良くない話をしているときは困った顔を意識します。
今話している内容がポジティブな内容なのかネガティブな内容なのかを、表情を一目見てもらうだけでわかるようにするのです。
また、視線は聴き手のほうを見るようにし、スクリーンや手元の資料はできるだけ見ないようにします。
そうすることで、聴き手が話者の表情を見やすくなります。
また、ジャスチャーは顔の近くでおこない、聴き手の視線が話者の表情付近に集まるよう誘導します。
5.あえて「沈黙」を使ってみる
トークの最中にあえて沈黙を採り入れることで、トークに緩急をつけることができます。
トークの最中に一瞬沈黙を入れることで「あれ、喋りが止まったぞ・・・!」という緊張が走り、聴き手の集中力を高めることができます。
話者の喋りがノンストップで続くと、聴き手が聴き疲れてしまいます。
そのため、トークには適度に「休符」を加えたほうがよく、沈黙をあえて入れることで「休符」を意識的に増やせます。
沈黙を入れられそうな場面で、思いきって3秒ほど沈黙してみてください。
この3秒という時間が、「沈黙を使った演出」と認識してもらえるオススメの時間です。
沈黙している時間が長すぎるとそれはそれで聴き手が困惑しますし、短すぎると、単に台詞を忘れたように思われてしまいます。
沈黙を入れる際は、聴き手のほうを見渡しながら、3秒ほど黙るのがコツです。
ぜひ試してみてください。
6.擬音を使い、情報のニュアンスをイメージしやすくする
トークを盛り上げるテクニックとして、「ドドン!」「シュッ!」「パッ!」などの擬音を使うこともオススメします。
「サクサク動くんです」「シュシュッと切り替わるんです」「ドドーンと登場しました」というように、擬音を用いれば情報のニュアンスをイメージしやすくなりますし、堅苦しいプレゼンにカジュアルさを足すことができます。
ただし、フォーマルな現場で擬音を用いると軽い印象を与えてしまう場合があるため、使いどころには気をつけましょう。
【ハイキングコース型メソッド その6】
プレゼンテーションの内容をガイドする
それではいよいよ、ハイキングコース型メソッドの最後のノウハウです。
それは、「ガイドが付き添っているようなプレゼンを意識する」です。
スライドをめくる前に、次の内容に触れておく
ガイドが付き添っているようなプレゼンを意識するうえで大切なのは、聴き手より先に歩いて道案内することです。
そこでオススメしたいのが、スライドをめくる前に、次の内容にトークで触れておくというテクニックです。
それを実践することで、聴き手は「次にこういうことを話すのか」と心構えをしながら話を聴けますし、プレゼン全体のリズム感も強化されます。
プレゼンの演出によっては、スライドをめくってから話すこともあるかと思いますが、基本は“次のスライドをめくる前に、先にトークで次の内容に触れておく”と覚えておいてください。
聴き手の気持ちを代弁する
また、優秀なガイドは聴き手の気持ちを汲み取り、フォローするのが上手いです。
「聴き手はこう思っているだろうな」という聴き手の心の声を代弁し、聴き手のなかで起こりそうなネガティブな気持ちを、先回りしてフォローしましょう。
たとえば、以下のようなフレーズを用いれば、聴き手に「この人、私の気持ちをわかってくれている・・・!」と感じてもらえます。
■聴き手の気持ちを代弁するフレーズの例
- ここまでの内容を聴いて、なんだか難しいなと思われたと思います。
安心してください、ここからの説明はとってもシンプルですよ。 - ノウハウの価値はわかったけれど、実際にできるか不安と思いますよね。
わかります、私もぶっちゃけ不安でした。
でも、実際にやってみると、案外カンタンなんですよ。 - 覚えることが多いな・・・と思われましたよね。
大丈夫です、今からお伝えする3つのことだけ覚えておいてください。 - この話は自分に関係があるのだろうかと思われたかもしれないですが、実は、皆さんにすごく関係があるんです。
聴き手の気持ちを代弁する際には、単に寄り添うだけでなく、聴き手を次の行動へ導くような言葉を添えることが大切です。
そのほかの演出テクニック
ここからは、プレゼンの演出を盛り上げるテクニックをさらに2つ紹介します。
「ホワイトボードを使うテクニック」と「ワークショップの実施」です。
1.ホワイトボードを使い、プレゼンに躍動感をプラスする
ホワイトボードに文字を書いたり図解を描いたりすれば、情報を動的に見える化できます。
また、ダイナミックにペンを動かせば、聴き手の注意を引きつけることができます。
聴き手は「これからどんなことを書くんだろう?」といったワクワク感をもちながらホワイトボードに視線を集中してくれるはずです。
さらには、聴き手との対話を交えながら書き込んでいくことで、双方向のコミュニケーションも実現できます。
私はプレゼン会場にホワイトボードがあれば、ほぼ必ず使うようにしています。
それくらい、ホワイトボードを用いたプレゼンは強力なのです。
プレゼンの内容を組み立てる際は、「ここはホワイトボードを使って説明しよう」と、あえてホワイトボードを活用する場面を想定しておいてもよいでしょう。
ちなみに、会場にホワイトボードがなくても問題ありません。
ホワイトボードシートとペンを持ち込むことで、即席のホワイトボード環境をカンタンに整えられるからです。
ホワイトボードシートをさくっと取り出し、壁に貼って書き込んでいくパフォーマンスは、どことなくプロフェッショナリズムも感じさせます。
ウェブライダーで使っている「セーラー万年筆 ホワイトボード どこでもシート」
世のなかには2種類のプレゼンターがいます。
「ホワイトボードを使うプレゼンターか、使わないプレゼンターか」。
極論、スライドがなくても、ホワイトボードさえあれば、プレゼンは成立します。
プレゼンスキルを高めるなら、ぜひ“ホワイトボード使い”を目指してください。
2.ワークショップを実施する
また、ワークショップを実施するのもオススメです。
ワークショップを通じて聴き手の脳に汗をかいてもらうことは、聴き手の知的興奮を高め記憶の定着にもつながります。
ワークショップにはひとりでじっくり考えてもらう「個人ワーク」と、参加者同士でワイワイしながら意見交換する「グループワーク」があります。
時間が許すのなら、その両方を実施するとよいでしょう。
そしてワークショップでは、参加者が持ち帰れる「成果物」をつくれると喜ばれます。
目に見える成果物があると参加者のモチベーションが高まりますし、完成した成果物は、後日、プレゼンの内容を思い出すきっかけになる場合があるからです。
プレゼンテーションの価値を共創する
プレゼンは、聴き手がいて初めて成立するものです。
聴き手に合わせて内容をテコ入れすることもあり、それはまさに「聴き手とプレゼンの内容を共創している(共につくっている)」状態です。
この「共創」という概念を深く考えるきっかけをくれた名著があります。
それが『闘争としてのサービス』という本です。
本書では、サービスの本質を“お客さまとサービス提供者がお互いを試し、見極める「闘い」”だと主張しています。
それはどういうことか? 高級鮨店を例にして解説します。
高級鮨店のカウンターに座ると、なかなかに緊張するものです。
大将が握るお鮨に手を伸ばすと、大将の鋭い視線が一瞬こちらに向けられる。
自分はお客としてここにいるはずなのに、心のどこかで試されている感覚がある。
お鮨を食べるのを楽しみに行っているのに、わざわざこんなに心が引き締まる感覚を味わなければならないのか。
本書では、そういった緊張の時間を、高級鮨店とお客がつくり上げている共創価値と捉えます。
高級鮨店に通うお客さんは、その店で提供される鮨やサービスの品質に大きな期待をもち訪れます。
そして大将もまた、その期待に応えるべく、美味い鮨を握るために技術を磨き続けています。
そこには、お客さんの期待や反応と、職人の技術力やサービス品質とが互いに作用し合いながら創り上げる特別な時間が広がっています。
プレゼンテーションも同じです。
聴き手の期待が場の空気を引き締め、話者はその期待に応えるべくプレゼンをおこないます。
トークをするなかで聴き手の反応が伝わり、その反応に合わせてその場で内容を調整し、臨機応変に対応していく。
このやりとりはまさに「共創」であり、同時に「闘争」でもあるのです。
プレゼンは本番こそが主戦場です。
準備はあくまでも準備、本番でこそ「聴き手とどう向き合うか」の精神が試されます。
聴き手の想定外の反応やリアクションがあったとしても、できるだけ柔軟に対応し、プレゼンが終了する最後のときまで内容や演出を調整し続けてください。
Presentationと似た言葉に「Presence(存在感)」という言葉があるように、当日に存在感を発揮できるプレゼンこそが、真のプレゼンテーションなのです。
聴き手を飽きさせないトークを目指す
このセクションではトークの重要性を説いてきました。
最後に、なぜトークが重要なのかを別の角度から解説しておきます。
トークとは結局のところ、聴き手の聴覚を刺激することでもあります。
私たちの耳は、目のように自由に閉じることができません。
文章なら読まなければいいだけですが、耳は常に開かれていて、どんな情報でも勝手に流れ込んできます。
つまり、聴き手が意識しているかどうかにかかわらず、耳は情報を受け取ってしまうのです。
そのため、耳から入る情報が退屈であればあるほど、脳はその刺激の少なさに反応し、自然と眠気を誘発してしまうのです。
だからこそトークでは、トーン、リズム、抑揚に変化をつける必要があるのだと覚えておいてください。
締めの言葉を大切にし、心地よい余韻を残す
「終わり良ければすべて良し」という言葉があるように、プレゼンテーションは最後の締めが肝心です。
聴き手に「ああ、良いプレゼンを聴けた」と思ってもらえるように、聴き手のなかに深い余韻を残す素敵な言葉で締めましょう。
また、最後で息切れしないように、スタミナをコントロールしながら話すことも大切です。
では次のメソッドに進みましょう。
次はプレゼンのトークを支える「スライドづくり」のメソッドです。
6.使いやすいスライドデザインのコツ
これまで何度もお伝えしてきたように、プレゼンの主役はあくまでもトークです。
スライドはあくまでもトークを支える脇役的な存在。
主張を構成するポイントごとにつくればOKです。
イメージとしては、紙芝居を思い浮かべてもらうとわかりやすいかもしれません。
紙芝居はすべてのシーンの絵を用意するのではなく、聴き手の想像力を補完したほうがよいタイミングで絵を用意し、絵と絵の間をトークでつなげることによって、聴き手をお話の世界に引き込みます。
あのように、聴き手の想像力の補完や理解のアシストをしたほうがよい場面で、スライドを用いるとよいのです。
また、プレゼン用のスライドは営業資料やカタログといった配付資料と異なり、ロゴやページ数の記載は要りません。
ロゴやページ数を入れてしまうと、スライドの内容によっては営業資料っぽく見えてしまうため、せっかくのプレゼンの内容を営業トークのように思われてしまいます。
また、プレゼン用スライドに配布資料っぽさが出てしまうと、プレゼンのためにわざわざスライドをつくったという特別感もなくなってしまいます。
プレゼン資料を配付資料っぽく見せないコツとしては、テキストの量は少なめにし、デザインもシンプルにしてみましょう。
ではここからは、プレゼン用のスライドをデザインするコツについて詳しく解説していきます。
ちなみに今回のスライドは、私がPowerPointで作成したものです。
私のようなノンデザイナーであっても、ある程度見栄えのよいスライドをつくれるようになるメソッドを解説していきます。
まず押さえていただきたいのは、以下の7つのコツです。
■スライドデザイン 7つのコツ
- ワンメッセージ or 箇条書き
- できるだけシンプルな言葉を使う
- デザインのノイズや違和感を無くす
- 余白を有効に使う
- 色を多用しない
- 本文の内容こそ目立たせる
- 表や図解を活用する
【コツ1・2】
ワンメッセージや箇条書きを基本とし、言葉はシンプルに
プレゼン用のスライドは、ワンスライド・ワンメッセージや、箇条書きが基本です。
また、できるだけシンプルな言葉を用いましょう。
以下のようにワンメッセージに補足となる帯を足すパターンもありです。
(ワンメッセージのスライドと比較して、1.5倍のメッセージ量なので、1.5メッセージと呼んでいます)
【コツ3・4】
デザインのノイズや違和感を無くし、余白を有効に使う
スライドのデザインはできるだけ洗練させましょう。
洗練させるといっても、何かビジュアルをつくりこむのではなく、オブジェクトのズレを無くし、余白を有効に使うだけでOKです。
PowerPointでスライドを作成する際は、ルーラーやグリッド線、ガイドなどを表示して作業しましょう。
また、スライド内に設置する画像をスライドいっぱいまで大きくすれば、不要な余白を無くせるだけでなく、ビジュアルにインパクトが出ます。
もし、設置したい画像サイズがスライドのサイズと合わない場合は、Adobe Fireflyの「生成拡張機能」がオススメです。
Adobe Fireflyの「生成拡張機能」を使えば、スライドの幅と合わない画像の左右を伸ばすことができます。
たとえば、4:3の画像を16:9の画像に拡張できるのです。
しかも、拡張された部分はとても自然な仕上がりで、強引な拡張ではありません。
私はスライドを作成する際、Adobe Stockで購入した画像素材を用いることが多いのですが、最近ではそれらの画像素材のサイズをAdobe Fireflyを用いて調整することが増えてきました。
(ちなみに、この記事のスライドで使っているいくつかの画像も、Adobe Fireflyでサイズ調整しています)
Adobe Fireflyなどの画像生成AIを使う場合、生成された画像が他社の著作権を侵害していないか不安になるかもしれませんが、Adobe Fireflyは著作権の問題のない画像のみを学習したAIのため安心です。
【コツ5】
色を多用しない
スライド内で使う色数はできるだけ少ないほうが洗練された印象を与えます。
もし複数の色を使いたい場合は、Adobe Colorなどの配色ツールを参考にして、調和のとれた配色を目指しましょう。
【コツ6】
本文の内容こそ目立たせる
スライド内で「見出し」と「本文」といった構成がある場合、見出しよりも「本文」のフォントサイズを大きくしたほうがよいケースが多いです。
なぜなら、見出しはあくまでも本文の内容を要約したものであり、重要なのは、見出しよりも「本文の内容」だからです。
ただし、本文の文字量が多い場合などは、ムリに本文のフォントサイズを大きくする必要はありません。
【コツ7】
表や図解を活用する
表や図解を用いることで、情報が視覚的かつ論理的に伝わりやすくなります。
ただし、情報を図解化する場合は、図解にしたほうがわかりやすい情報のみを図解化しましょう。
なぜなら、図解はけっして万能ではなく、図解のつくりかたによっては、かえって読み解くのに負荷がかかるケースもあるからです。
表の縦線は省略する
表を用いる際は、表の縦線を省略したほうがスッキリと見やすくなります。
ここまで、スライドの基本デザインについて解説してきました。
ここからは、スライドのデザインをさらに魅力的かつ使いやすくするためのTIPSを7つご紹介します。
スライドデザイン演出 7つのTIPS
- 部分的に手書き風フォントを試してみる
- オーバーレイ演出を活用する
- 現在地を伝える
- ポジティブは青、ネガティブは赤を使う
- アイコンや絵文字を活用してみる
- 吹き出しや集中線を使い、マンガ風にしてみる
- ドラマティックな演出を施してみる
【演出その1】
部分的に手書き風フォントを試してみる
スライド内のテキストの一部を「手書き風フォント」に変えることで、スライドに手触り感や親近感を付与できます。
聴き手に届けたいメッセージに温かみを加えたいときに使ってみましょう。
ちなみに私がオススメする手書きフォントは、鈴木メモさんがつくられている「花とちょうちょ」と「空とひこうき」の2つです。
【演出その2】
オーバーレイ演出を活用する
プレゼンの流れをわかりやすくするために、スライドに黒い半透明スライドを乗せて、ひとつ前のフォントとのつながりをわかりやすくする「オーバーレイ演出」もオススメです。
【演出その3】
現在地を伝える
プレゼンがどこまで進んでいるかの「現在地」が伝わる、目次的なスライドを用意しておくと、聴き手が迷子にならずに済みます。
【演出その4】
ポジティブは青、ネガティブは赤を使う
スライド内の文字に色をつける際は、ポジティブな情報には青系の色を、ネガティブな情報には赤系の色を使うとよいでしょう。
この配色は、私たちが普段の生活で見慣れている「信号機」をベースとしています。
【演出その5】
アイコンや絵文字を活用する
OSやアプリに用意されている「アイコン」や「絵文字」を活用すると、スライドに視覚的なわかりやすさを付与できます。
PowerPointなどにはデフォルトでさまざまなアイコンが用意されています。
ぜひチェックしてみてください。
【演出その6】
吹き出しや集中線を使い、マンガ風にする
吹き出しや集中線を使えば、マンガ風のスライドをつくれます。
マンガが嫌いな人はほとんどいません。
マンガっぽい演出が加わるだけで、スライドにワクワク感が加わり、聴き手がプレゼンに前のめりになってくれます。
【演出その7】
ドラマティックな演出を施す
これはちょっとした高等テクニック(?)ですが、私はプレゼンのなかで、あえて寸劇を採り入れることがあります。
寸劇を入れることで、エンタメ要素が高まり、「なんだかおもしろいプレゼンだな」と聴き手の興味をひきつけることができます。
寸劇を入れるのなら、プレゼン冒頭に入れるのがオススメです。
しょっぱなから強烈なインパクトを与えられます。
スライドの「表紙」はとことん魅力的に仕上げる
スライドのデザインはシンプルにしたほうがよいと言いましたが、スライドの「表紙」はとことん魅力的に仕上げましょう。
聴き手の期待感を高められますし、ほかのプレゼンとの差もつけられるからです。
ちなみに上記の画像は「朝までFigma」というイベント告知で使われていた画像を引用させていただきました。
素敵な表紙デザインばかりで、眺めているだけでイベントに参加したくなりますね・・・!
スライドをデザインするのが苦手な方は、表紙のみをプロのデザイナーに依頼してみてもよいでしょう。
スライドデザインの参考になるサイトやサービス
ここからは、スライドデザインの参考になるサイトやサービスを紹介します。
スライド共有サイトでは、さまざまな人がつくったスライドを見られます。
また、テンプレート配布サイトや「Adobe Express」や「Canva」などのサービスは、いい感じのスライドをさくっとつくりたい方にオススメです。
※サイトやサービスを紹介しているスライド画像をクリックしていただくと、各サイトやサービスのページに移動します。
「Speaker Deck」はスライド共有サイトです。
さまざまな業界の人たちによってつくられた色々なスライドを見ることができ、プレゼンの構成の参考になります。
検索性が高く、view数順でソートも可能です。
この記事で使っているスライドもアップしていますので、チェックしてみてください。
「SlideShare」は「Speaker Deck」と双璧を成す、スライド共有サイト。
「Speaker Deck」同様、さまざまな業界の人たちによってつくられた色々なスライドに出会えます。
「Pinterest」は画像に特化したブックマークサービスです。
「スライド」というキーワードで検索すれば、オシャレなスライドデザインの参考になる画像に出会えます。
「Slidecore」はハイセンスなスライドテンプレートがダウンロードできるサイトです。
PowerPoint用のデータだけでなく、Googleスライド用のデータもあります。
「Free PPT Background」は、PowerPointなどで使えるスライドの「背景画像」に特化したダウンロードサイトです。
「Adobe Express」はアドビ社が提供している無料のグラフィックデザインツールです。
スライドの作成も可能で、さまざまなスライドテンプレートが用意されています。
余談ですが、「Adobe Express」はAI機能が充実しており、とくに「画像から背景画像を削除する」機能は超便利です。
ブラウザのブックマークに登録しておきたいサービスです。
「Canva」はオンラインで使える無料のグラフィックデザインツールです。
Adobe Express同様スライドの作成も可能で、使いやすくてオシャレなスライドテンプレートが多数用意されています。
Google画像検索で「スライド」や「図解」といったワードで検索すれば、デザインの参考になるクリエイティブに出会えます。
とくに「マーケティング スライド」「マーケティング 図解」というような、「業界名+スライド」や「業界名+図解」といった組み合わせ検索がオススメです。
Amazonではスライドデザインの参考になる書籍と出会えます。
私がオススメしたい書籍は、スライドだけでなく資料全般のデザインアイデアが手に入る『資料作成デザインアイデア図鑑』です。
スライドデザインのノウハウについては、以下の記事でさらに詳しく取り上げています。
よかったら、以下の記事もチェックしてみてください。
見やすいパワポのデザインのコツとアイデアテンプレート集
「パワポ資料をつくったものの、デザインセンスがイマイチで困っている・・・」 「資料のデザインが素人っぽいから、プロっぽ・・・
ここからは、松尾流プレゼンテーション最後のメソッド「PDCA」の回し方を取り上げます。
良いプレゼンとは、何度も改善を繰り返しながら磨かれていくものです。
PDCAサイクル、つまり計画(Plan)、実行(Do)、確認(Check)、改善(Act)の流れを回し続けることで内容や伝え方が洗練され、聴き手の心の響くプレゼンを実現できます。
7.PDCAの回し方
プレゼンテーションを改善するには、以下の5つのアクションを意識することが大切です。
■プレゼンテーションを改善する
- プレゼンを録画して見返し、伝え方や構成をブラッシュアップする
- 複数人に聞いてもらい、フィードバックをもらう
- トーク内容をAIに評価してもらう
- スライドの内容やトーク原稿を推敲(すいこう)する
- アンケート結果と慎重に向き合う
【改善のコツ1】
プレゼンを録画して見返し、伝え方や構成をブラッシュアップする
自分のプレゼンを録画し見返すことで、自分のトークや立ち振る舞いなどを客観的に評価できます。
自分ではなかなか気付いていない表情やフィラー、身振り手振りのクセを確認できるほか、プレゼンのどの部分に時間をかけすぎているか、重要なポイントが早足で駆け抜けてしまっていないかといったことにも気付けます。
また、プレゼンのたびに録画し、見返すことを繰り返せば、自分がどう進化しているかも実感できます。
【改善のコツ2】
複数人に聞いてもらい、フィードバックをもらう
プレゼンを改善するには、他者からの客観的な意見が欠かせません。
複数の人からフィードバックをもらうことで、自分では気付けなかった改善点がわかります。
また先述しましたが、プレゼンは聴き手がいて初めて成立するものです。
人の数だけ視点や感性があります。
そのため、複数の聴き手にフィードバックをもらうことで、プレゼンの価値を共創していけます。
【改善のコツ3】
トーク内容をAIに評価してもらう
コンテンツ制作の強力なアシスタントとして使える生成AI。
この生成AIを用いれば、トーク台本の内容にフィードバックをもらえます。
たとえば、トーク台本が完成したら、「ChatGPT」にテキストを貼り付け、以下のプロンプトを投げてみてください。
さまざまな視点からの意見が出力されるはずです。
トーク台本だけでなく、プレゼンテーションの内容を録音・文字起こししたものを投げてみてもいいでしょう。
■プロンプトの例
以下は、私がWebマーケターの方向けに「成果につながるコンテンツマーケティング」のノウハウを説いたプレゼンテーションの文字起こしです。
この文字起こしの内容を用いて、以下の3軸で評価していただき、改善点があれば教えてください。
日本語でお願いします。
- 論理の一貫性は十分か?
- 主張を支える情報量は十分か?
- 参加者として面白い内容か?
【改善のコツ4】
スライドの内容やトーク原稿を推敲(すいこう)する
スライド内の文章やトークで用いる表現は、できるだけわかりやすく書きましょう。
また、誰かを傷つける差別的な表現がされていないかもチェックしておく必要があります。
そこで、文章表現を磨きあげるためのオススメツールを紹介しておきます。
そのツールの名前は、文章作成アドバイスツール「文賢(ぶんけん)」です。
この文賢(ぶんけん)は私たちウェブライダーが開発・提供しているオンラインツールで、入力された文章を、「読みやすさ」「わかりやすさ」といった視点だけでなく、炎上につながるリスクはないかといった視点でチェックできます。
文賢(ぶんけん)が便利なのは、PDFやPowerPoint、Word、Excel形式のファイルをそのままアップすれば、なかの文章が自動で抽出されてチェックできることです。
私は大事なセミナーに登壇する前に、スライドのPDFを文賢(ぶんけん)にアップし、表現の最終チェックをするようにしています。
どんな言葉がトラブルにつながるかがわかりづらい時代です。
公に情報を発信する際は、文賢(ぶんけん)のようなチェックツールを使って、トラブルを未然に防ぐようにしましょう。
【改善のコツ5】
アンケート結果と慎重に向き合う
セミナーなどのイベントでは、必ずアンケートをとりましょう。
聴き手の理解度や満足度を知ることで、セミナーが成功したかどうかがわかるだけでなく、次回の改善方針のヒントとなります。
■セミナー時のアンケートに入れたい設問例
- セミナーの満足度を教えてください
(非常に満足/満足/普通/やや不満/不満) - セミナー内容の理解度を教えてください
(とてもよく理解できた/理解できた/普通/やや理解できなかった/理解できなかった) - セミナー内容は期待どおりでしたか?
(期待以上/期待どおり/期待以下) - セミナーに参加した動機を教えてください
- セミナーの感想や役に立った内容があれば教えてください
- 改善してほしい点や追加してほしい内容があれば教えてください
- 次回以降、取り上げてほしいトピックや内容があれば教えてください
ただし、アンケートをとった際は、すべての聴き手の意見を参考にすべきかどうかは慎重に検討する必要があります。
なぜなら、聴き手にはそれぞれ固有の課題や背景があるため、Aという聴き手には最高の内容でも、Bという聴き手にとってはイマイチだったということが有り得るからです。
すべての聴き手から100点の評価をもらえるプレゼンテーションはなかなか実現できません。
八方美人になることでプレゼンテーションの魅力が減ってしまうのであれば、そのプレゼンを最も届けたい対象者からの意見を重視し、それ以外の聴き手からの意見に関しては、ひとつの参考とさせてもらうという姿勢がよいでしょう。
というわけで、ここまでおつかれさまでした!
今回、松尾流プレゼンテーションの極意ということで、私自身が500回以上の登壇経験を経て体系化したメソッドをお届けしてきたわけですが、いかがでしたか?
すべてのメソッドをいきなり実行するのは難しいかもしれませんが、今回のメソッドをひとつでもよいので少しずつ採り入れていただき、より“伝わるプレゼンテーション”を実現していただければと思います。
では、最後に今回の記事の「まとめ」です!
8.まとめ
優れたプレゼンテーションの3大要素
- メリット(聴くべき理由)の提示
- 話者や内容の信頼感
- 聴き手の心をつかむ伝達力
優れたプレゼンテーションを組み立てるには、「メリットを提示する」「信頼感を高める」「聴き手の心をつかむトークをする」という3つの要素を意識しましょう。
そしてそれは「聴き手目線」でプレゼンを組み立てることであり、聴き手に「お得感」をおぼえてもらうことでもあります。
プレゼンの内容を考える際、多くの人は自分の「Will」「Can」に偏りがちですが、聴き手の「Need」こそが大切です。
「Need」「Will」「Can」、この3つの要素が重なる領域の最大化を目指しましょう。
そして、そのようなプレゼンは「魅力的なハイキングコース」でもあります。
コースの特長 | プレゼンでの表現 | |
---|---|---|
1 | ゴールがどこかわかる |
|
2 | ゴールへの期待値が高い |
|
3 | 案内板が用意されている |
|
4 | 道が歩きやすい |
|
5 | 道中を楽しめる |
|
6 | ガイドが付き添ってくれる |
|
聴き手を最高のゴールへ導く、歩きやすくてワクワクする一本道をつくりましょう。
あなたのプレゼンテーションを待つ人がいます。
あなたの情報が、主張が、トークが、多くの人に影響を与え、変化や行動を促すことでしょう。
お相手はウェブライダーの松尾 茂起でした。
ご清聴ありがとうございました!!
この記事でご紹介した「松尾流プレゼンテーションメソッド」を広める活動を始めます
私は今後、この記事でご紹介したプレゼンテーションのメソッドを広める活動をしたいと思っています。
松尾流と銘打つのは、諸先輩方のプレゼンを研究してきた立場からすれば大変におこがましいのですが、プレゼンには人の数だけやり方があるため、あえて松尾流と名乗らせてもらいました。
冒頭でお伝えしましたが、プレゼンのスキルは、セミナー登壇や発表の場だけでなく、記事やLPの作成、さらにはセールストークにも使えます。
つまり、仕事や人生を好転させるスキルなのです。
また「相手のメリットを軸に情報を伝える」という視点は、コミュニケーションのトラブル回避にもつながります。
世の中の悩みのほとんどは対人関係のトラブルであり、その多くが利己的なコミュニケーションに起因するものです。
今回のメソッドは、利他的なコミュニケーション術でもありますから、このメソッドをさまざまな人が習得することで、世の中のネガティブな空気を少しは緩和できるのではないかと思っています。
よろしければ、この記事の感想をX(Twitter)でいただけるとうれしいです。
あなたからの感想が私の活動のモチベーションとなります。
ぜひよろしくお願いいたします。
また、法人さま向けの「プレゼンテーションスキル習得研修」も始めています。
数名程度に対しておこなう小規模なプレゼンから、500人を超えるような大規模なプレゼンまで対応可能です。
会社全体の「伝える力」が飛躍的に向上します。
ご興味のある方は、以下のリンクからお問い合わせいただけますと幸いです。